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VANILAが描くネットワークとアルテリアの未来図

インターネットにつながりさえすれば、いつでも、どこでも仕事ができる時代。安全性を担保しつつ、場所や時間の制約を取り払うには、ネットワーク自体を周辺環境に左右されない、身軽なつくりにする必要があります。そうしたニーズから生まれたのが、アルテリア・ネットワークスが手がける、次世代のネットワーク機能サービス「VANILA」です。しかもこのVANILA、アルテリアグループ(以下アルテリア)のビジネスさえも、ガラリと変える可能性を秘めているとか!? 開発プロジェクトをリードした青田 創さんに、サービスの特徴から開発秘話、アルテリアのこれからの組織のあり方、仕事の捉え方まで。たっぷりと聞きました!

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青田 創(はじめ)さん
アルテリア・ネットワークス株式会社 IPプロダクトマネジメント部 ネクストエッジプロダクト課 課長。高校で情報処理科を専攻、SIerでサーバ設計や構築、運用を担当し、2012年にアルテリア・ネットワークスの前身となる丸紅アクセスソリューションズに入社。現在まで一貫してサービス企画職に従事。付加価値の高い通信サービスの提供を図るべく、次世代型サービスの開発をリードする。趣味はプラモ・ラジコン制作、バイク・自転車、アクアリウム、キャンプ、クラシックギターと多岐にわたる。

早く・スマートに・スモールに ネットワーク機能の仮想化がもたらす恩恵

――アルテリア・ネットワークスが提供するVANILAとは、どのようなサービスなのですか。

会社などの組織でネットワーク網を築くとき、ルーターやファイヤーウォールなどの機器を必要とします。これらはアプライアンスと呼ばれ、これまでは専用の機器を、それぞれの拠点に設置するのが一般的でした。

しかしVANILAは、NFV(Network Functions Virtualization)という仮想化技術を使い、アルテリアのネットワークに接続する形で、アプライアンスが従来担っていた機能を利用できるため、機器の設置を必要としません。

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VANILAサービスイメージ

――ユーザーがVANILAを導入することの利点はどこにあるのでしょう。

アプライアンスを必要としないことで、いくつもの効果が期待できます。まず物理的な装置がありませんからスペースの確保が不要なこと、それから消費電力の削減につながり、CO2の排出も抑えることができます。次に、機器の手配や設置工事を必要としないので、申し込みから利用開始までにかかる日数が大幅に短縮できます。初期投資を抑えられることから、中小企業やスタートアップでも利用しやすいのも特徴です。

また「使いたいときに使いたい分」も重要なコンセプトです。従来のネットワークは、想定される最大通信量等に合わせて仕様やアプライアンスを決める必要がありました。けれどもVANILAは仮想のネットワーク機能を使うため、柔軟に調整できるようになります。まずは最小で契約して状況を見つつ機能リソースを増強していく、繁閑期に応じて契約内容を変更するなどといった使い方も可能です。

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――いろんなメリットが期待できるのですね。

ネットワーク機能の仮想化は、私たちアルテリア側にもポジティブに作用します。ひとつはユーザーと同じように、アプライアンスの管理が不要になることです。機器の設置はスペースを必要としますし、電力もそれなりに消費しています。また機器の経年劣化や、他の装置や仕様との互換性への配慮も常につきまといます。

しかしNFVの活用によってアプライアンス管理の煩わしさから解放されるうえ、ネットワーク基盤を集約できます。端的に言えば、これまでサービスごとに基盤を整える必要があったものを、ある程度まとめられるようになったのです。これは非常に画期的なことです。

というのも、サービスごとに基盤を持つとなると、その分だけ機器の調達とネットワークの構築が必要です。問題は準備にかかる時間とコストで、従来の仕組みだと平気で半年ほどかかることも珍しくありません。これではいくら新しいサービスを開発しても、市場参入までの動きがとても鈍いものになってしまいます。けれども仮想上で構築できるなら、ソフトウェアさえ入手できれば1週間ほどで実装できますから、クイックにローンチできます。

コスト面については、複数のサービスが共通のネットワーク基盤を用いることで、補完し合うことができます。収益があまり期待できないサービスでも、ほかのサービスによって運用をカバーできるのは大きな利点といえるでしょう。

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アルテリアらしさを損なわない、自在性と自動化のバランス

――どうしてVANILAを開発したのでしょう。

大きなところでは、私たちを取り巻くネットワーク環境の変化があります。これまでセキュアな通信を行うには、専用線や閉域VPNのような、基本的にインターネットを介さない閉域のネットワークサービスが主流で、アルテリアでもサービスを強化してきました。

しかし昨今、ビジネスシーンでもネットワークの主流は、インターネットに移りつつあります。クラウドコンピューティングが発達し、データの管理にしろ、仕事使うソフトウェアにしろ、SaaSのようなITサービスを使うのが一般的になっています。そもそもソリューション開発自体が、インターネット上で行われるようになっている時代です。

また私たちのサービスのユーザーは、多拠点展開するお客様も少なくありません。特にドラッグストアやコンビニエンスストアなどの小売店になると、店舗開発からオープンまでのサイクルが短く、ネットワーク整備もスピードが求められます。たとえばVPNひとつとっても、開設までに時間のかかる閉域VPNよりインターネットVPNを採用することが多く、ほかの業界・業種でも同じような傾向が見られるようになってきていました。

もはやインターネットを使わずに仕事することなど、ほとんど不可能な社会になりつつあるわけで、私たちアルテリアもこうした市場の動きにしっかりと対応していく必要があります。そこでこれまであまり注力できていなかった、ITネットワークサービスを充実させていこうという背景から、VANILAの開発に踏み切りました。

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――VANILA(バニラ)という名前の由来は?

VANILAは、Virtualized ARTERIA Networks Immaculate Layered Applicationsの頭文字を集めたものです。といっても、「バニラ」という音が先にあって、フレーズは後づけなのですが(笑)。3文字の名前がいいねと、開発時にみんなで相談しました。

システムやゲームの業界では、カスタマイズや改変を施していないソフトウェアのことを、バニラ(Vanilla)と言うことがあります。まっさらで手垢のついていない状態で、私たちのVANILAもImmaculate(汚れのない)、すなわちシンプルで自在性に富んでいるというメッセージを込めました。

なぜならば、VANILAを実際にユーザーに紹介するのは、主にSIerなどのパートナー(代理店)だからです。いくつものソリューションを組み合わせて包括的なネットワーク提案を行うパートナーにとって、VANILAが使い勝手のいい仕様になるようこだわりました。

――引き算の開発は、意外と難しいのではないでしょうか。

実はアルテリアにとってNFVサービスは、諸刃の剣でもあります。先ほどVANILAの開発経緯について説明しましたが、組織課題の観点では、自動化・標準化も重要なキーワードでした。つまりネットワーク基盤を集約することで保守やアップデートに要するパワーを省力化し、社内の大きな開発プロジェクトにエンジニアを集中的に配置するというように、メリハリのある登用によって、全体の成長を加速させていく組織の仕組みが問われていました。

一方で、行き過ぎた自動化や標準化は、アルテリアのよさを潰してしまう恐れがあります。というのも、メガキャリアではできないようなオーダーに、時に細やかに、時に泥臭く応えるところに、アルテリアのユニークネスと強みが存在するからです。実際、クラウド利用を理由にアルテリアのサービスを解約したものの、使い勝手の悪さから私たちのもとに戻って来るというユーザーもいます。アルテリアらしい自在性は担保しつつも、可能な部分は効率よく自動化を図ることが大事なのだと思います。

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趣味の1つであるクラシックギター。音楽が好きで、自分でも演奏できるようになりたくて始めた。休日に集中して練習することで、独学でも弾きたかった曲が弾けるように。

VANILAは“人にしかできない仕事”を創りだす

――プロジェクトを進めていくうえで、リーダーならではの苦労もあったのでは?

新しい挑戦に前向きな雰囲気を、常に心がけていました。ネットワークインフラ系エンジニアのあるあるなのですが、やっぱり“つながって当たり前”を主戦場としているので、マインドが基本的に保守的なんですよね。このマインドをどうひっくり返すかは、私にとって重要なテーマでした。

エンジニアの不安を払しょくするには、学ぶしかありません。ですから自ら先回りでインプットに励み、開発に必要なところを抜粋して伝えるようにしていました。私も元はエンジニアですから、彼らが新しいものに目を向けるようになる勘所は感覚的に理解しています。また営業や運用担当も含めると、プロジェクトには30人近く関わっていましたから、それぞれの立場から映って見える景色を踏まえたコミュニケーションを意識しました。

――VANILAに対する今後の期待について、教えてください。

VANILAは新しいサービスであると同時に、今後のアルテリアの重要なネットワーク基盤でもあります。つまり既存のサービスも含め、VANILAに準拠した仕様への変更を視野に入れています。

またVANILAの仕組みは、従業員の働き方にも影響を与えます。たとえばこれまでのように、ユーザーの拠点ごと、サービスごとにネットワークを築いていたときは、何かあると担当者の力業で乗り切ってきました。

しかしマンパワーで補っていた部分を集約化・自動化できる条件が揃った今、私たちはもっと他のことにリソースを注ぐべきです。具体的にはアイデアを出したり、ユーザーに喜ばれるサービスを開発したりというような、人でなければできない仕事です。それには、私たち自身がより人間らしい暮らしを営み、ユーザーに思いを馳せることにもっと時間を費やす必要があります。

実はネットワークづくりって、クリエイティブで人間くさいところがある。VANILAはアルテリアという組織が持つ人間くさい部分を、より深く引き出す仕組みでもあるのです。

▼NFVサービス「VANILA」の詳細はこちら

※この記事は2024年4月時点の内容です。

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