業務を通じ手にしたナレッジを後進へ 私を育てた“知る”への渇望
アルテリア・ネットワークスで、VPNサービスの保守運用に携わる田之上貴彦さん。まもなく入社20年目を迎え、社内ではベテランの域に入ります。4年前まで線路(光ファイバー網のこと)ひと筋だったことを踏まえると、なかなかのキャリアチェンジ。環境が変わってもプレイヤーとして活躍し続ける秘訣や、後進の育成に力を入れる理由をたずねました。
1日のスケジュール
9:30 出社
ホームオフィス(在宅勤務)制度も併用し、出社はだいたい2日に一度のペース。混雑のピークを避け、少し遅めの通勤が定番です。
10:00 問い合わせの対応
ヘルプデスクをはじめ、関係各所からの問い合わせに対し、方針を決めアクションに移します。長期的な検討が必要なものから、至急手を打たなければならないものまでさまざま。加えて課題が突発的にやって来るのも、この部署ならでは。優先順位を決めて、一つひとつ着実に解決を図ります。
13:00 ランチ
窓口業務のため、ランチタイムもオフピーク。食べ過ぎると眠くなるので、量をコントロール。少し前までお弁当を持参していましたが、最近はもっぱらコンビニで調達です。
14:00 打ち合わせ
問い合わせ対応と並行しながら、新しいサービスの導入に向けた検討や、障害や課題への対応のすり合わせ。取引先との定例会も。
16:00 マニュアル改訂やデータ分析
ヘルプデスクのフローやマニュアルの改訂をしたり、問い合わせ状況のデータを集計したりして、さらなる業務改善を図ります。
19:00 退社
問い合わせの状況を見ながら、問題なければ業務を終了します。災害や通信障害など、緊急性の高いトラブルのときは深夜に及ぶことも。ただこういった時に気持ちが奮い立つ性分でもあり、やはり現場が好きなんだなと思います。
専用線からVPNへ入社15年目の大異動
――田之上さんは、社員番号がかなり若いと聞きました。
そうですね…、社員が1000人以上いて、出入りがあることを踏まえると、100番台はかなり若いかもしれない(笑)。アルテリアの前身のさらに前、グローバルアクセス時代に2005年に入社しました。「線路企画部」という光ファイバーの敷設にまつわる部署で、当時一緒に汗を流した先輩方や同僚は、今や社内の各部署で重要な役割を担っています。
私はというと、現場での勤務で一貫しています。最初は光ケーブルの敷設にあたり、現地調査に出向いたり、工事の計画を立て外部の事業者と調整を図ったりして、専用線の開通まで円滑に進められるよう管理する業務を担っていました。その後メンテナンスの部署に異動し、土木工事などで一時的に光ファイバーの移設が必要なときの切替手順の調整や、お客様への案内、スケジュール調整などを手がけていました。
入社した頃はまだ会社も小さく、本当に人がいなくて。線路のことなら何でもやるという感じでしたね。それに伝送装置や光ファイバーについて、機器ごとの特徴を把握する必要があるし、行政や他の通信会社との関係も影響するので、意外と専門性が高い。そうしたこともあり、専用線中心の生活を送ってきました。
――それが4年前、VPNサービスを扱うチームに異動します。
そうなんですよ。専用線から離れるのは、入社15年目で初めてでした。なので、内示を受けたときは、まさか自分がVPNサービスや付随するサービスの保守業務に携わることになると思っていなかったので、戸惑いが無かったと言えば嘘にはなります。今はヘルプデスクなどに届いた問い合わせについて、窓口だけで完結できないものを中心に、状況や問題点を整理して対応を図ります。
私が担当するサービスは、関係者が多岐にわたることもあり、方々との調整は気を遣うところですね。ユーザーとも直接お話することはなく、間接的なやりとりになる。けれども、どのような形であれ、アルテリアのサービスをご利用いただいていることには変わりはないわけです。私たちが届けるものに価値を感じてもらい、快適に使っていただくことが何より大切だと考えています。
「わかる」と楽しいから、周りにも自分にも知ったかぶりをしない
――それにしても大幅な配置転換に、ご苦労もあったのでは。
最初はやっぱり大変でしたよ。2020年といえば、ちょうど新型コロナで緊急事態宣言が出ていた頃です。アルテリアグループでも出社制限があり、ホームオフィスが基本でした。早くチームに馴染み、貢献したいと思うものの、オンラインでのコミュニケーションは慎重になりましたよね。私はプロ野球が好きで、阪神タイガースの大ファン。幸いチームに虎党のメンバーがいて、彼には随分助けられました。
仕事の面でいえば、専用線とVPNは同じネットワークでも、レイヤーが違うんですね。「OSI参照モデル」という通信機能の7つの段階でいうと、専用線は物理層と呼ばれるL1にあたり、VPNはL2やL3といった、通信機器による情報のやり取りや、IPアドレスを介したやり取りに該当します。OSI参照モデルはL1を土台に、L2、L3…と積み上がっていく構造で、上にいくほど要素が細かくなっていきます。
そのためVPNのほうが、何か起こったときの関係性が複雑で、判断の分岐がいくつも現れる。伝達する情報も多くなるので対応の難しさを感じます。本当に勉強の毎日です。ただ私自身は、“知る”という行為そのものが、すごく好きなんですよね。クイズとか雑学とかを扱う番組も、つい見ちゃいますし(笑)。
――“わからない”を“わかる”に変えるのに、心がけていることは。
まずは、知ったかぶりをしないことですよね。周りに対しても、自分に対しても。私、すぐ人に聞いちゃうんです。自分で解決できないことは、わかる人に教えを乞う。入社当時に“何でも屋”だった頃からそう。相手は年上だろうと若手だろうと関係ないです。聞き方やたずねるタイミングは気をつけますが、横並びにいる誰かにもパッと聞いちゃいますね。
それに、私はとことん調べる性分。今はキーワードさえ拾えれば、ネット検索で有用な情報に当たることも多いですし。社内のことならサーバー上の資料を漁るのも苦にならない。うちのような合併を重ねた会社だと、意外なところに思いがけない情報が埋もれているんです。「こんな資料があったとは…!」と、発掘に夢中になっていることも。あまりにも調べているので、以前同じ部署だった同僚に「あのときの資料って、今どこにあるんだっけ?」って聞かれることもあるほどです(笑)。
ただVPN自体は、光ファイバーを使った回線上のサービスです。問題が起こったときの要因が光ファイバーであれば、問題解消に向けてのプロセスはたとえ機材や事業者が異なっていても専用線と変わることはあまりありません。これまで培ってきた経験が役に立たないということはないのです。
やっぱり現場が好き! 若手の成長を見届けたい
――後進の育成にも、力を入れているそうですね。
光回線の仕組みについて、新入社員や経験の浅い若手向けに研修講師を務めています。通信するのに光ファイバーで何が起こっているのかとか、ファイバーが曲がっていてもどうして光が届くのかとか。
たとえば、光ファイバー同士は融着機という専用の機械を使い、熱で周りのガラスを融かしながらつなげているみたいなことって、教本には書かれていない。原理や理論は学べても、工事現場で具体的にどういう作業をしているのかは、意外とブラックボックスなんです。
けれども保守や修理を依頼するにあたり、現場での作業や状況をイメージできるかが、とても大事になってきます。部門では窓口業務にあたる人たちが急速に増えていることもあって体験の機会を設けているのですが、自分のほうが楽しんでいますね(笑)
いまの若い人たちって、オンラインで何かをしたり見たりするのに慣れているので、その反動なのか、リアルな体験への欲求が強い気がするんです。教えていて、リアクションがすごくいいんですよ。みんなに通信の土台の部分を知ってもらえるのが嬉しいし、また自分も新しい学びを得る機会になっています。
――アルテリアで働き続けて、もうすぐ20年目を迎えます。通信やアルテリアがお客様に届ける価値について、どのような変化を感じていますか。
私がこの業界に入ったときとは、通信の量も質も比べものにならないくらいに発達していますよね。途切れず遅延のない通信を求めるのは、少し前まで大きなお金が一瞬で動く証券会社のような、一部の業界に限られていました。さらに遡れば、アナログの電話回線でインターネットにつないでいた頃など、通信に数十分かけるなんてことも珍しくなかった。
それが今では家庭で動画を見たり、仕事をするのにクラウドサーバーにアクセスしたり、ゲームをプレイするにも遅延がある意味命取りになる。一般の生活者でも、通信にスピードとボリュームを必要とする時代です。そういう意味では、ネットワークへの関心やニーズの高まりを実感しますよね。
問い合わせの窓口でも、「想定していたのと違う」といった相談を受けることがあります。もしかしたら契約前の段階で紹介が不足していたのかもしれないし、説明に問題はなくても、違った形でお客様が受け取ってしまうこともある。いくら注意していても、認識のズレが生じてしまうときって、あると思うのです。
そうしたときは、相手の話を“きちんと”聞く。理由はどうあれ、お客様が困っているのは紛れもない事実です。まずは耳を傾けることが、関係を築く第一歩だと思います。だからといって、迎合はしない。私たちのサービスは万能ではないかもしれないけれど、自信を持って勧められるものばかりです。難しい要求にも信念を持って臨む必要があります。
そのうえで大事なのは、文脈を意識したコミュニケーションではないでしょうか。一つひとつの要素を点で説明するのではなく、それぞれの関係性を整理して、ストーリーを築く。流れのある説明は、お客様の理解を助けます。正しさに加え、わかりやすさを極めることも、アルテリアの価値のひとつだと思います。
――今後はどのようなキャリアを考えていますか。
そうだなあ…。やっぱり私自身は、現場が好きなんです。今の時点では誰かをマネジメントするとか、チームを率いるみたいなことは、あまり関心がなくて。もちろん私が担う必要があれば、やるのでしょうけれども。
どちらかといえば実践を積んで、これまでの経験と重ね合わせながら、ナレッジを共有し、現場に還元する役割のほうが、自分には合っているような気がするんですよね。そして若手が成長するさまを、すぐそばで見届けたい。それが自分をここまで育ててくれた、アルテリアへの恩返しなのかな。