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「マンション防災に関わる人を支えたい…」思考錯誤の末にたどりついたサステナブルな仕組みとは

つなぐネットコミュニケーションズの「マンション防災支援サービス」にスポットライトがあたったのは、森谷和德社長が「マンションISPからマンションサービスプロバイダーへ」との方針を打ち出した2022年4月のことでした。

2007年のサービス開始以来、メインのインターネット事業の脇を固めるバイプレーヤーだったマンション防災支援サービスにとって、16年の日々を経てようやく到来した絶好の機会。「注目されている今こそ動くべき」と、マンション防災支援サービスにおける社内外の課題と日々向き合っていた濵口加津子さん、坂本真美さんが立ち上がりました。

※クイズの答え:トイレ

濵口加津子さん
株式会社つなぐネットコミュニケーションズ 営業企画本部 ソリューション推進部 オペレーションデザイン課 兼 マンション防災推進チーム所属。2017年に入社し、現在まで防災事業を担当。主な業務内容は、防災マニュアル策定、防災セミナー、防災訓練支援等。一般社団法人マンション防災協会(MALCA)では、2013年3月設立当初より同協会の事務局を担当するマンション防災のエキスパート。好きな食べ物は辛ラーメン。
坂本真美さん
株式会社つなぐネットコミュニケーションズ 営業企画本部 ソリューション推進部 ビジネスデベロップメント課 兼 マンション防災推進チーム所属。2016年に入社し、現在まで防災事業を担当。主な業務内容は、デベロッパー様や管理会社様への防災備蓄品のご提案。前職では管理部門の仕事をしており、つなぐネットに入社して営業職にチャレンジ。ストレス解消法は、旅行先でおいしいものを食べること。

防災サービスの最前線で感じていた課題を解決したかった

――つなぐネットが防災事業に着手して16年になります。現在、マンションに住む方々の防災意識についてどう感じていますか?

濵口さん 1981年6月1日以降に建築確認を受けたマンションは、建築基準法の新耐震基準に準拠しており、これは震度6強から震度7程度の揺れでも倒壊等の被害を生じないことを目標としたものになります。最近のマンションは制震・免震の優れた技術を取り入れていることも多く、マンション自体の防災力はとても高くなりました。

東京都が2023年に修正した地域防災計画に「在宅避難」が盛り込まれたのも、マンションの建物がいわばシェルターとして十分に機能するだろうという考え方からきています。ただ、世間一般には在宅避難はいまだに広く浸透しているとはいえず、在宅避難に備えて準備すべきこともあまり知られていない印象があります。

坂本さん マンションは構造が強い半面、地上に降りるための命綱ともいえるエレベーターが止まるリスクがあり、危険を伴います。このことも、在宅避難が推奨されている理由のひとつです。なので、備蓄品の準備もエレベーターが使えないことを想定して進めなくてはなりません。

一般的に備蓄品といえば水や食べ物をイメージすると思いますが、エレベーターが止まってライフラインが途絶えた場合に、実は一番重要なのはトイレです。備蓄品のご提案をする際に仮設トイレのお話をすると、「避難所に行くからいいよ」「コンビニがすぐ目の前だから」と言われるお客様も多いのですが、震災時には断水して自宅のトイレは流せませんし、エレベーターも止まっているので避難所やコンビニに行くこともできないことがあります。

そもそも、大きな地震の際は排水管の損傷を考慮してトイレを流さないのがルールなのですが、この点もあまり知られておらず、まだまだ一般の方々に防災意識が浸透していないことを実感します。

濵口さん マンションの防災は、自分で家庭内での備蓄や家具の固定などを行う「自助」と、マンション全体で行動ルールや設備の使用ルールを決めて助け合う「共助」で成り立ちます。救助活動や避難生活でも住民同士の協力は不可欠なので、普段からコミュニティ形成をしておくことも重要です。

防災訓練や地域のお祭りなどで顔の見える関係づくりを進めているマンションも増えてはいるものの、中には入居者の中に地域コミュニティの活動を好まない方がいる場合もあり、簡単ではないようです。

坂本さん 防災に取り組むにあたって、管理会社様に相談する管理組合様が多いことも、マンション防災の課題です。本来、管理委託契約に防災に関する事項は含まれていないのですが、どうしても窓口として頼りにされてしまうんですね。

――1社で複数のマンションを管理している管理会社様には、そういう相談が四方八方から来るわけですよね。

坂本さん マンションごとに住民の構成、建物の構造、集会室の有無などが異なるため、備蓄品にしてもマニュアルにしても個別の対応が必要で苦労されています。一般的には備蓄品の期限が来てから業者に相見積もりを取り、理事会や総会で承認を得るといったプロセスを踏むのですが、それにも管理会社様の協力が不可欠です。

濵口さん 見積もりについては、当社も課題を感じていました。防災事業は少数精鋭の部署ですから、業務の効率化が必須です。備蓄品の期限が来るたびに見積もりを出す工数や、管理組合様の判断を待つ時間を削減したいと思っていました。

「防災意識の向上」「管理会社様の負担軽減」「社内業務の効率化」。この3つの課題を漠然と感じているとき、SDGs活動の一環としてつなぐネット全社員で防災事業を推進する取り組みが始まりました。さらに、新たな事業企画を公募し、全社員でレビューして新規事業化を進めるプロジェクト「つなぐチャレンジ」が開始され、課題解決の企画を出してみることにしたのが、今回新しくサービスを企画開発した経緯ですね。

マンション防災をハード・ソフト両面から末永く支援する「防災サステナ+」

――お二人が「つなぐチャレンジ」で立案した「防災サステナ+」は、どんなサービスですか?

濵口さん 「防災サステナ+」は、防災備蓄品の選定・納品・更新に加えて、災害時の共助の一環で居住者の安否確認などができる専用ウェブサイトの利用、無料の防災相談をセットにして、マンション防災をハードとソフトの両面からバックアップするサービスです。お手軽な月額利用料金で、継続的に利用できることが特徴です。

坂本さん 新築の場合、当社でセレクトした備蓄品をワンセットにしてご紹介し、物件ごとのご希望や倉庫のスペースなどによって調整します。
主な品目としては、マンホールの上に簡易な便座やパネルを置いて簡単に仮設トイレが作れるマンホールトイレや、ドアが歪んで閉じ込められたときなどに使う工具、停電時に共用部に置くと防犯の面でも活躍する投光器と発電機、マンションの階段でもスムーズに負傷者を運べる布担架など、災害時の共助に重要なツールをそろえました。

マンション敷地内のマンホールの上に、簡単に設置できるマンホールトイレ。
バールやショベル、ハンマーなど、閉じ込められたドアをこじ開けたり、地面を掘り起こしたりするための災害救助用工具。

――備蓄品で期限があるものは、自動で納品してくれるんですね。

濵口さん 備蓄品は当社で期限管理をし、更新期限を迎えるものは自動で新しいものを納品します。これにより、管理組合様も管理会社様も、そして私たちも、更新期限のたびに見積書を出したり、協議をしたりといった手間を大幅に削減できます。

坂本さん 備蓄品は期限が長い分、気づいたら消費期限が切れていることが多く、管理組合様から依頼されて管理会社様が期限の管理をしているケースもあり、以前から大変だという話はお聞きしていました。

――サービスの形はすんなり決まったのでしょうか?

濵口さん いえもう、かなり苦労しました(笑)。防災は長期的な取り組みでもあるので、少しでもお得に、かつ便利に利用していただけたらと思って、最初は備蓄品のサブスクサービスにしようと考えていました。でも、備蓄品の更新期限までは何も恩恵を受けられないのでは、サービスとして満足度が低いですよね。

そこで、つなぐネットが提供している既存サービスで、マンション管理組合様の運営に特化したグループウェア「Mcloud」を標準装備し、オプションである防災機能を使用できるようにしました。平時は理事会の議事録管理や出欠確認、備蓄品の取扱動画の共有などのクラウドサービスを利用でき、万一の際には、居住者の安否確認・安否登録ができる機能を活用していただけるようにしています。

坂本さん 当社の防災事業で月額サービスは初めての試みでしたから、最初は本当に手探りでしたね。サービスの在り方や月額費用の設定などについて、営業、経理、法務など、さまざまな部署からアドバイスをもらい、なんとかリリースにこぎつけることができました。

現場の声に耳を傾け、関わる人を幸せにするサービスに育てたい

――つなぐネットの16年と、おふたりが入社されてからの7年弱がぎゅっと凝縮されたサービスだと感じました。たくさんのマンションで導入していただけるといいですね。

坂本さん これまで多くの管理会社様からご要望をいただきながら、リソース不足で泣く泣くお断りしてきた備蓄品管理などについて、このサービスで少しでもお役に立てたらと思っています。
これからも現場で皆さんの声とニーズを拾いながら、少しずつサービスをブラッシュアップしていきたいです。

濵口さん 将来的には、このサービスが当たり前の世の中になり、継続的にマンションの安全安心に寄与することで、居住者様、管理会社様、そして私たちの三者がみんなハッピーになる事業に育つことが理想です。
また、備蓄品の適切な管理は、フードロスや産業廃棄物の削減にも貢献していけると思うので、思考錯誤しながらがんばっていきたいと思います。

※この記事は2023年11月時点の内容です。

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