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「インターネット完備」物件の真実。 料金と品質のメリット徹底解説

最近マンション・アパートの物件情報でよく見かける「インターネット完備」の文字。便利そうですが実際、通信速度やつながりやすさなど、使い勝手はどうなのでしょうか?

そんな疑問を解消するため、この記事では集合住宅向け全戸一括型インターネット接続サービス(以下、全戸一括型インターネット)の仕組みや特徴をご紹介。入居前にチェックするべきポイントなどをお伝えします。

集合住宅向け「全戸一括型インターネット」の特徴とは?

大手不動産情報サイトで、首都圏の任意10駅を調査したところ、至近5年竣工物件の実に75%が「インターネット完備」物件であることがわかりました(編集担当調べ)。

こうした物件のインターネット接続サービスには、以下のような特徴があります。

  • 入居者個人が回線工事やプロバイダーの手配を進める必要がなく、入居してすぐにインターネットが利用できる。

  • 契約者は物件のオーナーや管理会社、管理組合。

  • 建物全体でインターネットに加入していて、ひとつの回線を入居者全員でシェアする仕組みになっている(全戸一括型インターネット)。

  • 個人向け任意加入型インターネット接続サービス(以下、任意加入型インターネット)よりも利用料金が安い傾向がある。管理費に1,000~2,000円程度の利用料が含まれていることもある。場合によっては「無料」という物件も。

利用料金については、大手不動産情報サイトにて、「同じ最寄り駅、築年数、間取り」の平均家賃を比較したところ、インターネット完備物件とそうでない物件の平均家賃の差額は1,000~2,000円程度でした(編集担当調べ)。一方、国内で最もサービス利用者の多い任意加入型インターネットの月額利用料金は4,400~4,620円(※1)。

インターネット完備物件の毎月の平均利用料金を2,000円と仮定すると、任意加入型インターネット利用料金との差は少なくとも2,400円。年間(×12か月)で28,800円の差額が生じる計算になります。

※1 総務省「電気通信事業分野における市場検証(令和5年度) 年次レポート」「【参考Ⅲ-15】FTTH市場(小売市場)事業者別シェアの推移(サービス提供主体別)」においてシェア1位はNTTドコモ。「ドコモ光 1ギガ」マンションにお住まいの方(1ギガタイプA・B、2年定期契約の場合)の月額料金(税込)。

魅力的なメリットですが、それだけに、「安いぶん、通信速度が遅いのでは?」、「1つの回線をシェアするなら、混雑する時間帯には、つながりにくくなるのでは?」といった疑問も浮かびます。

そこで今回は、マンション向けインターネットサービスシェアNo.1※2、つなぐネットコミュニケーションズ(以下、つなぐネット)の川原久幸さんに、全戸一括型インターネットの仕組みや、入居前にチェックすべきポイントを聞きました!

※2 MM総研「全戸一括型マンションISPシェア調査」(2024年3月末)に基づくもの

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株式会社つなぐネットコミュニケーションズ
マンションプロダクトマーケティング部
担当部長 川原 久幸さん

2003年にアルテリア・ネットワークスの前身であるUCOMに入社し、つなぐネットへ出向。その後、マンションISPの企画とマーケティングに21年にわたり携わる。豊富な経験を活かして技術分野での営業サポートも行い、社内からの信頼も厚い。趣味はキャンプでの料理。「スキレット1つで何でも作るが、中でもパエリヤ、アヒージョ、パンケーキは自信あり」(川原さん)

「全戸一括型は、任意加入型より通信品質が劣る」は誤解?

――ずばり!全戸一括型インターネットは、任意加入型インターネットに比べ通信速度が遅かったり、つながりにくかったりするのですか?

「全戸一括型インターネットは料金が安い分、通信速度が劣る」というイメージを持つ方が多いようですが、結論から言うと全くそんなことはありません。
きちんと建物の規模を踏まえて設計された「全戸一括型インターネット」であれば、「任意加入型インターネット」と遜色ない通信品質でご利用いただけます。

――全戸一括型インターネットが安い理由と、サービスの質は関係ない…ということでしょうか。それでは、なぜ入居者が個別に契約する任意加入型インターネットより利用料金を安くできるのでしょうか。

その理由は3つほどあります。

1つ目は、任意加入型インターネットと比べて、営業活動にかける費用が節約できることです。

任意加入型インターネットの場合は、幅広い利用者に選んでもらうために、テレビやインターネットに広告を出して認知度をアップしたり、販促キャンペーンを行って購買意欲を高めたりする必要があります。一方、全戸一括型インターネットの契約者は、建物のオーナーや管理会社です。限られたターゲットに対して営業活動を行うので、任意加入型インターネットに比べると、費用が節約できるのです。

2つ目の理由は、工事費用が抑えられることです。

任意加入型インターネットの場合は、申し込まれた入居者ごとに工事を行うため、その都度日程を決めて、2~3人の作業人員を確保する必要があります。物件によっては、回線を引き込むためのバケット車(※3)や、交通整理スタッフも用意しなければなりません。こうした工事の原価がかかるため、任意加入型インターネットの多くは3万円から4万円程度の初期費用が設定されています。

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※3 バケット車・・・人が載るバケット(かご)が付いた高所作業車。回線工事において高所での作業が必要となる場合に使用されます。

対して、全戸一括型インターネットは、新築であれば建築中に他の配線工事と併せて、全戸へのLAN配線を行うことができます。既築物件であっても、工期をまとめたり、必要な人員や設備の手配を一度に済ませたりすることができるので、工事費用が大幅に抑えられます。

そして最後の理由は、長期契約が見込めることです。

任意加入型インターネットは、引っ越しや他社への乗り換えといった理由で、せっかく申し込んでいただいても、短期間で解約に至るケースがあります。例えば、賃貸住宅の平均居住年数は、単身世帯で約3年、ファミリー物件では約5年(※4)。営業活動費や工事費用を平均利用年数で回収できるよう設計すると、月5,000円前後の利用料金を設定せざるを得ません。一方、全戸一括型インターネットは建物全体で契約するため、入居者が入れ替わっても利用契約は継続されます。初期投資を長期にわたって回収できる見込みがたっているため、月額利用料金を安価に設定できるのです。

※4 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第28回 賃貸住宅市場景況感調査」「9.平均居住期間」より。

――なるほど、利用料を安く設定できる理由はよくわかりました!でもやはり、建物全体で1つの回線を共有するということは、ネットがよく使われる時間帯には混雑して、通信速度に影響が出たりするものなのでは?

確かに、加入しているインターネット接続サービスによっては、そういった事象が起こる可能性もあります。そこで、その物件に採用されている全戸一括型インターネットが、「どういうプロバイダーの、どんなプランを採用しているか」までチェックすることが大切なのです。

例えば、現在多くの方が利用されている光回線の最大通信速度は下り/上りともに1Gbpsです。この1Gbpsというのは、 法人向け品質で設計されていれば、普通の規模のマンションやアパートでは使い切れないほど余裕がある速度です。

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このイラストのように、用途によって、データ通信の発生するタイミングや、通信量は異なります。100戸程度のマンションで同時にデータ通信が発生する時間帯があっても、イメージ的にはこのくらいの余裕があり、安定して利用できる状態がキープされています。

――法人向けという言葉がでてきましたね。同じ1Gbpsの光回線でも、なにか違うのでしょうか?

はい、法人向けインターネット接続サービスは、インターネット上位通信設計が異なります。「インターネットの品質」において、重要なのは回線よりも、インターネットに抜けるまでの上位通信設計の部分なのです。

プロバイダーの実力はココで見る 
インターネットの出入り口、IPバックボーン

――「上位通信設計」というと…?

インターネットの仕組みを簡単に説明すると、建物に引き込まれた光回線は最寄りの通信局(通信設備)で集約され、その後、さらに上位の通信設備に集められます。最終的に、プロバイダーが提供する「IPバックボーン」と呼ばれるインターネットの出入り口に接続されます。インターネットの快適さは、この最寄りの通信設備とIPバックボーン、それぞれで十分な通信帯域が確保されていることで実現されます。

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つなぐネットの親会社であるアルテリア・ネットワークスは、法人向けにもインターネット接続サービスを提供しており、国内外多くのプロバイダーと直接接続やトランジット接続を行うことで、国内屈指の大容量のIPバックボーンを構築しています。
つなぐネットが提供する全戸一括型インターネットでは、建物の規模や用途によって、このIPバックボーンを回線毎に適切に割り当てています。処理能力の高い法人向けグレードのサービスを適用することで、マンション内で同時かつ大量のデータ通信が発生したとしても、問題なく処理できるようになっています。

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――プロバイダーによって、そのあたりの設備や設計に違いがあるということなんですね。

はい。ですから、「インターネット完備、利用料無料」という条件が同じだったとしても、快適性に差がある可能性はあります。なかなか「どのプロバイダーが、どういう設備設計をしているか」まで把握するのは難しいですが、検討している物件が信頼できるプロバイダーと契約しているかどうか、どんなプランに加入しているかどうかは、チェックしておくとよいと思います!

オトクさも快適性も!
集合住宅向けインターネットのリアル

全戸一括型インターネットの利用料金が任意加入型インターネットに比べて安いのは、諸経費が抑えられるといった理由がありました!さらに、信頼できるプロバイダーによるインターネット接続サービスが採用されている場合は、通信品質も問題なく、快適に利用できそうです。入居者にとってメリットが多い、入居したくなる魅力的な条件だからこそ、今「インターネット完備」物件が増えているんですね。

通信品質については、入居前に加入しているサービスやプロバイダーをチェックすることも大切ですが、入居したあとに「通信速度や、つながりにくさが気になる」という場合にも、賃貸の場合はオーナーや管理会社に相談したり、分譲の場合は理事会の議題として見直しをしたりするという方法もあります。インターネットは今や日常生活に欠かせないインフラのひとつ。あきらめずに検討してみてはいかがでしょうか。

つなぐネットコミュニケーションズの「マンション全戸一括インターネットサービス」についてはこちら

※この記事は2025年2月時点の内容です。