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プロフェッショナルに“信”を築く 全員が主役のつなぐネットコミュニケーションズ進化論

アルテリアグループのマンション向けインターネットサービスを展開する、株式会社つなぐネットコミュニケーションズ(以下つなぐネット)では、2024年6月28日より臥雲敬昌(がうんのりまさ)が代表取締役社長に就任しました。家庭でのインターネット接続サービス普及期に、当社立ち上げにも参画していた臥雲さん。二十余年の時を経て、事業や組織に対しどのような未来図を描いているのでしょうか。

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株式会社つなぐネットコミュニケーションズ
代表取締役社長 臥雲敬昌(がうん・のりまさ)さん

1990年丸紅に入社。分譲マンション開発、賃貸マンションや店舗・物流センターの請負、マンション管理営業推進などを歴任して2001~2005年につなぐネットコミュニケーションズ設立に参画。その後、不動産証券化スキームによるオフィス・商業ビル開発、私募リート設立や上場リート運用会社などを経て、2023年4月に同社に出向。2024年6月より現職。アルテリア・ネットワークス常務執行役員マンション事業本部長。好きな食べ物は、寿司、焼肉、もろきゅう。ストレス解消法は街歩き。

住まい方の多様化に合わせ、暮らしに寄り添うサービスを届ける

――つなぐネットコミュニケーションズの代表取締役に就任し、3週間が経ちます(取材時)。今のお気持ちをお聞かせください。

ひと言で表せば、「ワクワク、ドキドキ」ですよね。やっぱり組織のトップとしての責任は重い。頑張らなきゃなと、身が引き締まる思いでいます。一方、マンションインターネットサービスを核としたさまざまな事業のポテンシャルがまだまだ期待できる領域だと感じていて、会社の仲間と全員でチャレンジができることを楽しみにしています。

何より四半世紀近く前、自分が設立に関わった会社に、経営者として再び携わるなんてキャリアを歩む人は、丸紅グループ広しといえども、そうそういないでしょう。自分はとても恵まれているし、強い縁を感じています。自分の持てる力は余すことなく注ぎ切りたい、そういう気持ちです。

設立当初のつなぐネットは、本当に小さな会社でした。設立間もなくアメリカ同時多発テロ、ITバブル崩壊とマクロ情勢は激動の最中。国内の通信業界ではソフトバンクが突然パラソル部隊を組成して街頭でYahoo BB ADSLモデムを無料で配布し、驚異的な勢いで加入者を伸ばすことになりました。危機に直面した当社は通信キャリアの切り替え、サービス料金の見直し、任意加入方式(既存マンション営業)からの撤退、資本増強と、選択と集中により黒字化を達成し、4年3か月の任期を全うした記憶がよみがえります。

それから十数年後には、ライバル会社だったUCOMと合流して今の体制になるわけです。組織も仕事も一気にサイズアップ。一方でブランドも異なり、業務に携わる社員はそれぞれに異なるバックグラウンドを持っています。ですから昨年古巣に戻って来たときは、どうなっているのだろう、外側だけひとつになって、中はバラバラなんてこともあるんじゃないかと思いながらの復帰でした。

ところが、こちらが想像した以上に、意思疎通を活発に図れていましたね。そして、アルテリアグループ全体を俯瞰したときには、明確な役割分担によって安定している部分もありながら、もう少し有機的なつながりが生まれるとさらなる価値創出につながるのかなと感じているところです。

――先日社内に向けて行われた就任時のあいさつでは、前社長の掲げた事業方針を受け継ぎつつ、「暮らしのサービスプロバイダー」というメッセージを伝えていたのが印象的でした。

従来は、「住まいのサービスプロバイダー」としていたのですが、住まいを“暮らし”に変えたことには理由があります。

つなぐネットはマンション全戸一括ISP(インターネットサービスプロバイダー)を事業の核とし、デベロッパーやマンションの管理組合、管理会社、そして実際に入居されるユーザーの方々に、これまで支持され続けてきました。そしてこれからも、大事にしていくべき領域であることには、間違いありません。マンション、すなわち集合住宅を熟知した通信のプロフェッショナルとして、安心して快適に利用いただけるインターネットサービスを提供し続けることが第一の使命です。

一方で集合住宅の市場に目を向けると、多様化が進んでいます。包括される範囲が広がっていると言ってもいいでしょう。たとえば若い人たちを中心に、シェアハウスでの暮らしが珍しくなくなりつつありますよね。定住する家を持たない、ホテル住まいのアドレスホッパーのような生活も、コロナ禍には話題になりました。

また、外国人旅行客の場合、旅行と言いながらも1カ月間ほど滞在することも珍しくありません。日本に愛着を持った外国の方が、日本でマンションを自分のために購入したり、資産として取得したりすることも一般化しています。それに高齢化が進んだことで、自宅が終の棲家(すみか)とは限らなくなりました。人生の最後を、高齢者福祉施設で過ごすケースも増えてきています。

つまり、住まい方は画一的ではなくなり、私たちの生活自体も多様性や流動性が高まっているのです。この流れは、決して一過性のものではないでしょう。

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「子どもの頃に合唱団に入っていたこともあって、ハモり癖があるんです。カラオケに行っても、主旋律から勝手に3度、5度とズラしてしまう(笑)。でも新型コロナもあったせいか、しばらくご無沙汰していますね」(臥雲さん)

ITが当たり前の時代だから 改めて問われる“つなぐ”の意義

――暮らしに合わせて住まいを変えていく、という変化ですね。

そうなんです。ですから住まいというハードのみならず、暮らしというソフト領域にも目を向け、サービスの付加価値を高めていく必要がある。そうした思いから、「暮らし」という言葉を使うことにしました。

既につなぐネットでは、学生寮やヘルスケア施設などのアコモデーションにも、サービスを提供し始めています。これはもちろん、これまでのマンションインターネットサービスの実績があってのことです。けれども中長期的に未来を見据えたとき、より幅広く私たちのサービスを捉える必要があると考えています。

そして私たちは、もっとお客様に近づき、暮らしに寄り添うことができるはずです。というのも、つなぐネットはアルテリアグループの一員であり、親会社のアルテリア・ネットワークスのネットワーク技術と通信回線網に高い優位性を持ちます。そして三菱地所と東京建物という、国内を代表するデベロッパーも株主であり、株主以外のたくさんのデベロッパーや管理会社などの事業提携パートナーと取引をさせていただいています。したがって、施工運用と営業両面でリアルのフィールドネットワークを持ち、通信を通じてバーチャルネットワークで管理組合やマンション入居者のみなさんとつながっています。

これは生活者のニーズを的確につかみ、質の高いサービスをつくり上げ、広く市場に提案できるだけの土壌が備わっていることを意味します。技術開発とマーケティングの2つの強みをかけ合わせることができるのですから、非常に恵まれた環境にありますよね。

これから私たちの暮らす社会は、リアルとバーチャルがよりシームレスになっていくことでしょう。そしてどんなにデジタルが発達しても、リアルが失われることはあり得ない。その側面から考えても、リアルエステートと通信の双方からアプローチできることは、つなぐネットにとってアドバンテージなのです。

――臥雲社長は、「信は万物の基を成す」という、野球界で活躍された野村克也さんの言葉を座右の銘としています。どこに共感をおぼえますか。

ここで言う“信”とは、信頼、信用、自信などをさします。信じる、信じ合うことは物事の根幹にあるということなんですけど。もうひとつ注目したいのは、信という漢字が、人偏(にんべん)と、言という「つくり」でできていることです。つまり人に言う、言葉を伝えることで信は成り立つ。そして自信を宿した言葉にこそ、人と人をつなげる力があるのです。

私は高校まで野球に明け暮れていた人間として、野村さんの考えに共感することが多い。そして社会人になってからも、“信”に対する思いはブレることなく、ここまで来た気がします。

そして興味深いのは、「つなぐネットコミュニケーションズ」という社名そのものが、まさに“信は万物の基を成す”を表していると感じるのです。実は会社を設立するとき、私も社名を決める場に居合わせていました。

――それは思い入れもひとしおですね。

当時のことはうっすらと覚えている程度ですが、いくつか候補がある中で、やっぱりこれだよねと決まったんですよね。ちなみに他の候補をいうと当時はドットコム会社が多く立ち上がっていた頃でサービスブランドとして採用された「e-mansion.com」とふたつが最終選考に残り、自分も「つなぐネットコミュニケーションズ」に1票を投じました。ちょっと時代を感じさせますよね。インターネットがまだ新しいもの、近未来的なものという印象でしたから。

それからインターネットが社会インフラとして欠かせないものになり、時代の流れが2周、3周したことで、人がつながることの根幹や本質な意義が問われる時代になりましたよね。そうした意味で、「つなぐネットコミュニケーションズ」という社名は、私たちの存在意義を端的に表している。当時は「少しベタ過ぎないか」といった意見があったような気がしますが。むしろ、時代が追いついてきた、これからの時代にフィットし、リードするネーミングだと感じているんです。

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趣味は登山とゴルフ。「といっても、最近の週末はもっぱらゴルフですね。長らく不動産界隈を仕事にしていることもあって、身近なスポーツですね。つなぐネットの社員とも、何回か一緒にラウンドしたこともありますよ」(臥雲さん)

仕事へのオーナーシップとチームワークで価値の最大化を図る

――先ほど社内の意思疎通の話も出てきましたが、チームで成果を上げる風土が根付きつつあります。就任あいさつでお話しされた、「全員野球+頭脳野球」にも通じるのではないでしょうか。

実はつい先日、新入社員の歓迎会に声をかけてもらって顔を出したのですが、「どういう意味ですか?」と聞かれました(笑)。全員野球というのもいくつか考えがありますが、私が大切にしたいのは「全員がプロフェッショナル」であることです。

私たちは社会人であると同時に、職業人です。社会に価値を届け、お客様から対価をいただくことで生活を営んでいます。そして起きて活動している時間の大半は、仕事に費やすことになるでしょう。今日より明日、明日よりあさってと、ほんの少しでもいいから進歩・進化していること。全員がプライドを持ち、研鑽し続けながら働くことは、生きがいにもつながります。

次に、プロフェッショナルであるほど一人の非力さを痛感するものです。だからこそ周りとの連携を怠らず、自身は周囲に貢献できるように自律を図ります。私たちのビジネスは、企画開発に営業、エンジニアリング、運用、サポートなど、いろんな分野のプロフェッショナルが集まることで成り立っています。どこか一つでも欠けたら、お客様にサービスを届けられない。どこかのパートだけでどうにかなるものではない、全員が主役です。

野球でも、エースひとりが頑張ったってゼロ点では勝てないし、最強の4番バッターだけでは打線がつながりません。それに一見地味な守備や走塁が、ピンチを防ぎチャンスを広げるわけですから、やはりそれぞれのポジションが、プロ意識のもと自分の役割をまっとうすることで勝てるチームになる。そうした姿を、つなぐネットでも目指していきたい。

――頭脳野球はどうでしょう。

“自分の頭で考える”ということなんですけど、もう少し補うとオーナーシップへの期待ですね。たとえば、私はつなぐネットの社長ではありますが、あくまでも会社を経営する立場なんですね。各部門・部署の成長の姿を描くのは本部長や部長の役割ですし、チームはやはり現場管理職の影響を強く受ける。そして個々の案件を担うのは、社員一人ひとりです。

たとえば、ある案件について、お客様のことやお悩みを深く理解し、相手に寄り添えるのは他でもない現場の担当者であって、私にはできないことです。担当者こそ、この仕事の“経営者”なのです。

もちろん会社という枠組みがありますから、好き勝手にやっていいわけではありません。規模の違いはありますが、関係者の同意を取りながら意思決定を図り、事を前に進めるプロセスは、実のところ私の仕事と大きな違いはないのです。つなぐネットでやりたいことを、アルテリアグループの経営陣の賛同を得られるよう調整し、説明を果たすことが社長の責務なのです。社員ひとり一人が携わる現場の積み重ねがそれを支えているのです。

私たちの事業は顧客ごとのニーズに応じた、ソリューションビジネスを展開しています。時に限界突破を問われたり、過去の常識を疑う必要に迫られたりすることもあるはずです。そのとき、日ごろから“考える”という習慣なしに最適解を見出すのは厳しい。言われたまま、指示に従うのみではなく、常にプロアクティブに仕事と向き合っていてほしいですね。

マンションのDXを後押しし社会に不可欠な存在に

――臥雲社長ご自身はこれまでどのようなことを意識して、キャリアを築いてきたのでしょうか。

私は丸紅に入社後、不動産開発の領域での新事業の立ち上げや、不動産運用、経営に携わってきました。振り返ってみると、やはり機会に恵まれていますよね。総合商社の社員の立場で、事業をインキュベートする経験を重ねてこられたのですから。

とはいえ自分が強く望んでこのキャリアを歩んできたわけではないんです。目前にあるものを最善の形にしようと、誠実に向き合い集中する。すると乗り越えたところで、次の課題が降ってくる。その繰り返し。それを継続することで、成長や進化の瞬間が訪れるんです。

すぐに野球に例えてしまうのですが(笑)、110km/hそこそこのボールを打ち返すのがやっとのバッターが、突然150km/hに対応できるようにはならないでしょう。やっぱり111、112…、120、130と、やっと目が慣れて、体が反応して、ボールに合わせてバットを振れるようになる。

後は、人との関わりです。自分ではそんなに人づきあいが得意だとは思っていませんが、でもやっぱり、誰かと一緒に働く、共創することで、一人では叶うことのない景色を見ることができるんですよね。社会人を長くやってきて、確信していることのひとつです。

――最後に、これからのつなぐネットの注目ポイントをお聞かせください。

まず私たちの事業の核である全戸一括型マンションISPの安心、そして便利さ快適さを追求し、お客様との信頼をしっかり築き上げていきたい。これは大前提です。

そのうえで、先に述べた、暮らしのサービスプロバイダーとして、お客様の期待を受け止め、ニーズを理解し、クリエイトしていく組織へと進化していきたいと考えています。

たとえば、高齢化が急速に進む中で、IoTがマンション管理の人的負担を減らしたり、マンションでの暮らしの利便性をより高めたりできる側面があると思うんですね。建物と生活支援の両面で支援し、お客様の快適な暮らしと資産価値向上に寄与する。逆にマンションのDXを進めなければ、これからの人口減少社会を踏まえると、破綻してしまうところが結構出てくるのではないでしょうか。

そうした意味で、私たちつなぐネットコミュニケーションズが担うべき役割は大きいと感じています。今後ともどうぞご期待ください。

※この記事は2024年8月時点の内容です。